では、中国編-序(一)をどうぞ。
=====
9月25日午後5時、空港着。
空港に上司のTeaching Assistantが迎えに来ていると言われていたので、僕は意気揚々と巨大なスーツケースを転がし、出迎えのネームプレートを探した。
・・・
・・・
なんと、
あった。
なんということだ。あった。
無いと言うことくらいは想定内だったが、あった。嬉々として、その随分年老いた(失礼)おっちゃんTAに英語で話しかける。
・・・
・・・
あれ?
通じない。しかもなんか中国語で話しかけられている。おかしい。仮にも英語講師を迎えに来るTAが英語を話せない訳が無い。ていうかめっちゃ中国語で話しかけられる。分からない。
とにかく身振り手振りで意思疎通を図り駐車場まで行くと、そこはタクシー乗り場。しかもこのおっちゃんがまさかのドライバーである。これは僕が自分の名前を間違えているのか、あるいは実はまだこれが壮大な嘘っぱちの続きで(前ブログ参照)、このまま目隠しされて海辺の倉庫に連れて行かれた挙げ句、日本政府に身代金を要求されて全国放送になってしまい、帰ったら空港で記者会見して謝罪しなければならない感じのアレだろうか。母ちゃんごめん。
不安に身を投じたまま車が走り出してすぐ、おっちゃんの携帯がけたたましく歌い出す。インドポップを彷彿とさせる、妙に音階の高低が激しい歌である。
おっちゃんが一言二言話し、僕に携帯を渡す。大学のコーディネーター(を名乗る人物)からだった。
"Sorry, we had a kind of emergency here and our TA couldn't go to the airport, so we arranged the driver instead"
えーと・・・
許す。
いいよいいよ。こうして連絡くれたのだから・・・!(泣)言葉が通じるって素敵・・・!
尚、おっちゃんはこの辺りで僕が中国語を話せないと悟ったらしく、ついに黙り込んだ。
沈黙に沈んだ車が走ること2時間、ついに広大なキャンパスらしき場所へ入り込むと、おっちゃん今度は道行く人に何かを尋ねている。尋ねては走る。走っては止まる。止まっては尋ねてまた走り出す。
これは言葉が分からなくても分かる。
迷子になった人間の最終手段だ。
ここからさらに30分ほど、黙り込んだジャパニーズと道に迷ったチャイニーズの珍道中が続く。まぁ、おっちゃんは道を尋ねては車を走らせ、僕は車が止まる度に窓から侵略してくる蚊と対決していただけだが。
30分後、また車が止まり、おっちゃんが車外へ出て、中国人青年と共に帰ってきた。
"Hello! Sorry for the mess..."と話しかけてくれたその青年こそ、待ちわびていたTAだった。うわーん。やっと言葉が通じるよう。
TAと「飛行機はどうでしたか?」なんてありきたりな会話をしながら、タクシーで今度は教師用の寮まで移動。寮って言うか、まさかの家具家電ゲストルーム付きのアパートである。しかも費用は大学持ち。
良いのか・・・修士取りたての若造がこんな部屋に・・・。
管理人は速攻僕に中国語で話しかける。分からないって。
TA曰く、「中国人では無いのか?」と聞き、次に「大変若く見えるのに、大学の先生なのか」と驚き、最後に「日本語ではなく英語の先生である」という事にさらに驚いた、との事だ。
諸君、この会話を以降、例の会話と呼ばせて欲しい。
部屋に移動し、カーテンを開けると巨大な蛾がお出迎え。管理人曰く「自然が豊かな証拠よ」とのことでそれは結構なのだが、そういうのは外に限って欲しい。
TAと立ち話をしていると、上司と、先ほど電話で話したコーディネーターの計4人が部屋に訪ねてきた。その内一人は、僕と面接をした人物だ。自己紹介をし、多分これで詐欺では無いという事が確定した。皆本当に優しい人たちで、温かく迎え入れてくれた。
そして温かさもさることながら、僕は言葉が通じるありがたさに感謝していた。
わずかな会話の後、TAと近くのスーパーまでタクシーで移動して当座必要なものを買いそろえる事に。時刻は午後7時だが、不思議と疲れてはいなかった。
タクシーに乗ると、TAとドライバーが何かを話している。TA曰く、まず「中国人では無いのか」と聞き・・・おっと。
「例の会話」である。
500元(1万円)ほどの大きな買い物を終え、アパートに一度戻ってからTAと晩飯を食べに行くことに(帰りのタクシーにおける会話はご想像の通りである)。近くの大衆食堂でワンタンを頂く。おぉ、なんだか中国にいるっぽいぞ!ワンタン15個が入った大盛りを頂いて17元。340円。ちなみにこれで高い方である。
それにしても、ううむ、美味い!
おや、TAと店員が何かを話している。TA曰く・・・もういいか。
大盛り17元の餃子。大変美味。 |
食事を終え、アパートに戻り、TAにお礼を言って別れる。
さて今日は長い一日だった・・・。
寝るか、と寝室のカーテンを閉めると、
蛾。
お前まだいたのか。しかも二匹になってるし。
彼らを光の方へ誘って追い出すも、この夜、夜中に目を覚ますと床にゲジゲジ君が這っており、キッチンではすでに全世界からの嫌われ者、例の黒光り扁平虫が二名夜間巡回を行っていた。
・・・これは必ずしも自然が豊かというだけではないのでは・・・と当たり前の疑念を抱きつつ、一日目の夜は更けていく。
続く
0 件のコメント:
コメントを投稿